受けると決めた
そもそも、なぜ受けたのか
受験資格を得たから受けた。それが本音に近いです。強い動機はありませんでした。あって困るものでもないし、取れるうちに取っておこう、くらいの感覚です。
あって役に立つかは、正直分からない。でも、ないよりはマシだろう。それに——年をとってからこの量を勉強し直すのは、たぶん無理です。今でもきついのに。取れるうちに取る。動機はそれだけでした。
始める前の不安
循環器が専門で、他は自信がなかった
私はわりと早くに循環器1本になりました。専門はいい。問題はそれ以外です。
研修医の頃には触れていたはずの分野が、今の頭にどれだけ残っているのか。当時覚えたことが今の試験で通用するのか。それが本当に見えなかった。専門に寄っていると、症例だって幅広くは集まりません。だから「そもそも足りるのか?」というところから不安でした。専門を早くに決めた人なら、この感覚、分かってもらえると思います。
最初の壁
最初の過去問1周で、いきなり詰まった
まず過去問を1周した。そこで変な感覚に襲われます。なんとなく解ける。でも、なぜ解けたのか分からない。
そして問題の解説を読んでも、専門外はほとんど頭に入ってこない。一番こたえたのは、これでした。
どれが大事な論点で、どれは流していいのか、その区別がまったくつかない。
全部が同じ重さに見える。全部大事に見えるということは、優先順位がつけられないということです。何をどう勉強すればいいのか、そこで完全に止まりました。
最大の後悔
ノートを全分野で作った
ぶっちゃけ。これが一番の遠回りでした。
区別がつかないなら全部まとめてしまえ、と思って、私は各分野でノートを作り始めました。理解は深まります。地に足もつく。それは嘘じゃない。……でも、ノートって、「作る作業そのもの」に時間を全部持っていかれるんです。調べて、まとめて、きれいに書いて。気づけば、勉強しているのかノートを作っているのか分からなくなる。
しかも一度作り始めると、途中でやめるのが悔しい。だから最後まで作り切った。意地でした。
その代償が何だったか。
削れた睡眠と、家族と過ごせたはずの時間です。
子どもとの時間を後回しにして、ノートを書いていた。今思うと、あそこまでやる必要はなかった。勉強としては悪くない。でも合格が目的なら、間違いなくやりすぎでした。
試験が終わった最初の感想は、「受かったかな?」じゃありませんでした。「こんな精巧なまとめノート、作る必要なかったな。時間の無駄だったな」です。
やってよかったこと
「何がよく出るか」を早く掴む
攻略のカギは、いかに早く各分野の全体像を掴んで、「よく出る疾患」と「出ない疾患」の差に気づけるか。ここさえ分かれば、あとは覚えるだけです。
ただ、この「気づく」が、とんでもなく大変でした。
はっきり言います。普通に過去問や問題集を解いているだけでは、まず気づけません。何が頻出で何がそうでないか、問題は教えてくれないので。だから私がやったのは、かなり泥臭い方法です。古い掲示板のスレッドを漁り、受験した先輩たちを捕まえては「どんな問題が出た?」と片っ端から聞いて回った。ブログも読み漁った。どの分野の、どういう問われ方が多いのか。それを自分なりの地図にしていく。
この地図さえできれば、勝負は半分終わりです。逆に言えば、労力の大半はここに消えました。覚えるのは、そのあとの作業でしかない。順番で言えば、覚えるより先に「何を覚えるべきか」を知る。振り返ってみると、この知識が最も効率よく合格へつながったように感じます。
やってよかったこと
過去問を軸に据える
教材はいろいろ試しましたが、結局いちばんは過去問でした。実際に出るのは一部でも、問題の雰囲気と難易度は、これがまさに正本です。
使い方はシンプルです。最初に一度解く。次に他の教材で勉強する。最後にもう一度解く。それだけ。
ただ最後の解き直しでは、正解できるかだけじゃなく、「解説を自分の言葉で説明できるか」まで確認しました。答えを覚えているだけじゃ意味がない。人に説明できて、はじめて分かったと言えます。過去問は、最初と最後に置く「ものさし」。みたいな感じです。
一つ反省もあります。最初の頃、いろんな問題集をなんとなく1周してしまった。あれは順番ミスです。「何が出るか」を掴んでから解けば、同じ1周でも得られるものが全然違ったはずでした。
遠回りしたこと
問題集の解きすぎ
問題集は解きすぎました。正直、1冊、多くて2冊で十分です。これはもう、はっきりしています。何冊もやる必要はない。
冊数を増やしても、似た論点を薄くなぞるだけで、時間が散っていくだけです。それより1冊を繰り返したほうがいい。あと、これも言っておきたい。問題で覚える人、ノートで覚える人、どっちもいると思います。でもタイプに関係なく、最優先は同じです。全体像の把握と、それを自分が理解できているかの確認。これだけ。
もう一つ、時間配分の話。自分の専門分野とその周辺に勉強時間を回すのは、もったいない。そこはもう取れるんです。伸びしろは、手つかずの専門外にしかない。私はここでも少し時間を使いすぎました。
勉強時間の作り方
どこで時間を作ったか
朝、子どもの寝たあと、休日。捻出できる隙間は全部そこに充てました。特別なことはしていません。早起きして、寝かしつけのあとに、休みの日に。それだけです。
量で言うと、平日1日3時間、休日は12時間くらい。……書いていて思いますが、やりすぎです。しかもその多くをノート作りに溶かした。もっと少ない時間で、同じ所には届いたはずでした。だからこそ「どこで無駄が出るか」を先に知る価値がある。私の失敗が、そのまま誰かの近道になればいいと思っています。
直前期
とにかく苦手を潰す
直前は、ひたすら苦手分野です。苦手の点が低すぎると足切りに引っかかるので、そこを最優先で埋めました。
方針はこれ一本でした。得意を伸ばしても、上積みはわずか。でも沈んでいる分野を平均まで引き上げれば、その分がまるごと効く。だから直前は、苦手だけを見ていました。
試験当日
宿はケチるな
これは勉強と関係ない、でも地味に大事な話です。前泊するなら、宿はある程度いい部屋にしてください。
私は安く済ませようとカプセルホテルにしました。うるさくて、よく眠れなかった。研修医の頃は平気だったけど、年を取ったのかキツかった。あれだけ準備して、当日のコンディションを宿で落とす。本当にもったいなかったです。ここはケチる場所じゃない。それだけ。
振り返って
今もう一度受けるなら
もう一度受けるなら、あのノートは作りません。ノートのおかげで、めっちゃ高得点で合格しました。でも点数で資格に差は生まれません。
代わりに、こう回します。過去問で現在地を掴む。苦手分野を集中的にトレーニングする。余裕があれば全体を軽くさらう。ここまでで過去問も含めて自信がつけば、それで十分です。
それでも「まだ解きたい」という人は、みんなが使っている QuestionBank(QB)をやり込めばいい。ただ QB はやや難しめの問題も混じっているので、合格が目的なら、全部解けなくても気にしなくて大丈夫です。全問正解しないと受からない試験じゃありません。
その後
その経験から、NaikaQuest を作りました
勉強しているあいだ、ずっと思っていたことがあります。「苦手分野を、スマホで、いろんな角度から、いくらでも解けたらいいのに」。あのノートの後悔が、根っこにあります。
紙の問題集は重い。持ち運べない。新しい問題を解きたいのに、そのたびに何冊も抱えることになって、うまくいかない。しかも同じ問題を繰り返すと、答えを覚えているのか理解しているのか、自分でも分からなくなる。だから欲しかったんです。同じ論点を、色んな角度から聞いてくれる問題。そして、間違えた問題をちゃんと出し直してくれる仕組み。この2つが。
そこだけを狙って作りました。スマホで、苦手分野を、別角度の5択で何度でも。間違えた論点は、ちゃんと戻ってくる。既存の過去問題集やセルフトレーニング問題を置き換えるものではありません。あれで学んだ知識を、繰り返して定着させるための道具です。
いいのは、場所を選ばないことです。子どもの寝かしつけの横でも、通勤中でも、人を待っているわずかな隙間でも解ける。「今日は勉強できなかった」と罪悪感を抱える人は多い。でも、スキマで少しでも解けば、それでいい。ゼロと1は全然違います。
それと、もう一つ。書いていて気づいたことがあります。
合格するだけなら、完全に無駄だった、試験直後はマジ無駄なことをしたなと思った、あのノート。
結局あれが、今このサービスの土台になっています。
どの分野の、どこがどう問われるのか。ノートに書き溜めたその中身が、そのまま問題を作るときの元になっています。それに、出てきた問題が医学的におかしくないかを自分で確かめるときも、結局あのノートに戻る。
捨てたはずの遠回りが、いま一番効いている。人生、何が無駄になるか分からないものです。
あのとき自分が欲しかったものを、作りました。無料で1日3問から試せるので、よかったら使ってみてください。